身体で感情を知るということ
私たちは常に、裸の自分を覆い隠して生きています。
表情や動作、服装についてのマナーを注意深く守り、周囲の人に本心をのぞかせることは滅多にない。
その滅多にないことが簡単に起きるのが、東京の通勤電車でしょう。
車内は「仮面」の剥がれ落ちた人でいっぱいです。
でも、この弛緩は一時的なもの。
みな会社や学校に着けば、また感情のコントロールを取り戻し 微笑の下に本音を
隠すのです。
特に、ネガティブな感情を隠そうとするのが日本型コミュニケーションの特徴と言われます。
そして、その傾向は、社会的な責任が大きくなる壮年期ほど強くなる。
本音を隠すことに慣れすぎて、感情を受け入れることができなくなると これは問題です。
理性と観念の世界だけで生きていこうとするのは愚かなことだ。
感情もかけがえのない人生の要素であり、
それなしで社会的地位を得たり、
仕事や人づき合いを こなすことはありえない。
バルタザール・グラシアン
◇本音は「変化」に現れる
人の心に感情が湧いたとき、次に現れるのは「言葉」ではなく「動作」です。
特別に用意しない限り、必ず「無意識の動作」が先行します。
見るべきチャネルは3つ。
- 表情
- 声
- 身体
・視線が定まらなくなった、左右非対称の表情が表れた
・声のトーンが高くなった、早口になった、えー・あのー が増えた
・動作と言葉がチグハグだ( 首を縦に振りながら「いいえ、知りません」と答える)など、
3つのチャネルに何かしら違和感を感じたら注意が必要です。
気になる動作が何をきっかけに起こったのか、或は 止まったのかを見極めます。
そして、効果的な質問を投げかけ、言語情報も併せて相手の本心に迫るのです。
あらゆる動作は、文脈の中で判断して初めて意味を持ちます。
◇身体から感情を知る意味
警察庁の発表によると、2017年の日本の自殺者数は2万1321人(男性は女性の2倍)
8年連続で減少しているものの、先進7カ国の中では最悪のベルである。
人が嘘を言う前、表情を取り繕うまでのわずかな瞬間に顔面を走る表情のことを「微表情」と呼びます。
同じく一瞬の動作は「微動作」です。
これらを発見した研究者ハガードとアイザック、
そして、人の感情を読むスキルとしてこれを実用化*1したポール・エクマンらの研究動機は、「自殺の兆候を読み取って悲劇を止めたい」ということでした。
彼らの患者や家族が本心を隠して自死を選んだからです。
私の同僚や友人も「大丈夫、乗り切れる」と言いながら自死を選びました。
言葉は嘘をつく。
けれど、身体は無意識に本音を漏らす。
言っても詮無いことですが、もっと早く知っていたら・・と思ったりもします。
身体言語の研究は日進月歩です。
そして、その成果は、精神医学の分野を超え、ビジネス、アート、防衛といった幅広い世界で活用されています。
研究者でもない私にできることは、彼らの研究成果から上機嫌のタネを掘り起こし、このブログで発信することくらい。4月からは更新のペースを上げていきます!
今回は更新にずいぶん時間がかかりました。
それなのに、まとまりの悪い文章で・・
最後までお読みくださって、ありがとうございます。
ミーターズのビートとDr.ジョンのvo.が最高にカッコイイ、ニューオリンズ FUNKの一曲を。
「♪ 俺は正しい所にいた だが 時がマズかった
俺はマトモな旅をした だが 車のチョイスをしくじった ♪」と、そんな歌です。
♪ Dr.John『Right Place Wrong Time』('73)
https://www.youtube.com/watch?v=G5zPqgQ67yo&list=RDG5zPqgQ67yo&start_radio=1
*1:Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム/顔面筋肉の解剖学的知見を基礎とし、44の動作単位を要素に顔面動作を包括的かつ客観的にコード化する技術/P.Ekman、W.V.Friesenによる